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まち
街
宮本 百合子
「女性」1927(昭和2)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,689 字 · 37 页
「まあ、細い靴、よくあの体でこんな靴はけるもんね」
「子供んちから締めてあるのさ――見かけばかりでは仕様がありゃしないよ」
せきは、軽蔑するように囁いた。
「はばかりから出ても手を洗うこと一つ知らないんだからね」
「――……いい塩梅に風が落ちた……」襟巻をきゅっと引きつけ志津は街燈のついた往来へ出て行った。
四
明るい冬の日光が窓からさし込んで室内に流れた。土曜日だ。もう往来で遊んでいる子供の声が、彼等の二階まで聞えた。ダーリヤ・パヴロヴナはゆったり長い膝の上に布をたぐめて、縁とりをしている。向い側に、髪をもしゃもしゃにしたままのマリーナ・イワーノヴナが茶色のスウェタアに包まれ、頬杖をついてダーリヤの指先の動きを眺めていた。彼女の前に、白と桃色の毛糸で編みかけの嬰児帽が放り出してある。彼女がこの二階に来てから五日経った。ダーリヤも、マリーナも、その五日を実にはっきり数えて過して来たのだ。――
「アーニャ、何ぐずぐずしているんだろう」
マリーナが、その日何度目かにぶつぶつ云い出した。
「あの娘には、どんなに教えたって物を手取早くするということが解らないんだから――エーゴルの姪に違いないわ」