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まち
街
宮本 百合子
「女性」1927(昭和2)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,689 字 · 37 页
「レオニード・グレゴリウィッチ、どうぞこのことだけは誰にも云わないで下さい。――実に馬鹿気たことだ。私のようなこんな男が今更若い娘に夢中になるなんて――実に馬鹿気たことです! けれども、レオニード・グレゴリウィッチ、我々は、キリストを追放しつつレーニンの肖像を祭る。私にもマドンナがいる――マドンナ……ね、貴下は私の心がわかって下さる」
ジェルテルスキーは、自分にぴったり喰いついて熱心に光っているステパンの眼をさけるようにして頷き、境の障子をあけた。彼はステパンをどう扱ってよいか決心がつかず、いつも自分が彼とは全くかけはなれた者だと対手に思わせるような態度をとるのであった。
寝る前、マリーナが厠へ降りた間にダーリヤはレオニードを擁き、云った。
「リョーニャ、月曜日に行けたらエーゴル・マクシモヴィッチのところへ行ってらっしゃいよ、ね?」
七
ジェルテルスキーの二階から、ギターとマンドリンの合奏が聞えている。マリーナは、寝台の上で膝に肱をつきその手で頭を支えながら、陰気にマンドリンを弾くエーゴル・マクシモヴィッチを眺めていた。卓子は室の中央へ引出されて、上にパンや、腸詰、イクラを盛った皿が出ていた。