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ひょうげん
表現
宮本 百合子
「文学者」1940(昭和15)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,928 字 · 4 页
カッスル夫人がほんとうの芸術家の情緒に生きているならば、あのクライマックスでこそ踊らずにはいられないだろうと思う。女として自分の裡に活きているそのまざまざとした歓び、そして、この苦痛。体を凝っとはさせていられまい。そこで踊る彼女であってこそ、今やカッスルのパアトナアとしてのみのカッスル夫人ではない一個の新しい独自な踊りてとして生誕し得るわけである。
風邪をひいて臥ていた稲子さんのわきに坐って、私が一生懸命その心持を話したら、稲子さんは、ふっと笑った顔になって、もし男のカッスルが生きのこる方だったら踊ったかもしれない、と云った。私たちは女の作家なのだから、そういうことも決してその時ぎりで忘れるような自分たちの心持で喋っているのではないのであった。
〔一九四〇年五月〕