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うらぎり

裏切り

坂口 安吾

「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页

青空文庫

ようです。セラダが死んでからでも小夜子サンをモノにする時間も機会もあるでしょうが、それには金も時間もかかって、決して賢者のとるべき道ではなかったのです。

法本は日野をよんで、こんな風に相談をもちかけたのでした。

「キミの親戚の元貴族に小夜子サンをかくまってくれて、セラダのピストルや小坂信二の硫酸から守ってくれるようなヤンゴトナキ大人物はいないかなア」

「そんなものはいやしないよ。元貴族なんてみんな落ちぶれて大方人の脛をかじる方が商売なんだもの、これぐらいタヨリにならないのは今どきめッたにありやしないよ。第一、彼らは勘定高くって、およそ人助けには縁のない利己主義者なんだ」

「しかし、元貴族というのはセラダや小坂に対してはニラミがきくと思うんだがね。かりに隠れ場所が分っても彼らはにわかに手をだしかねると思うんだよ。だから、実際にそういう貴族が存在しないとしたら、ぼくらの手でそれらしい人物をつくりあげてみようじゃないか」

「ぼくの元貴族の肩書ぐらいじゃ、その細工に助力できる力はないなア。先生の手腕で、いいようにやっとくれよ」

「そうかい。それじゃア、ま、このことは他言は絶対無用だぜ」