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うらぎり

裏切り

坂口 安吾

「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页

青空文庫

これがセラダ一人のちょッとした事業だったわけです。セラダはあまり自動車をとばさぬように、わが胸を押えに押えて、顔色も変えずに池袋へ戻り、そこで人心地をとりもどして自分のアパートへ到着しました。二千万円の現金はデンとセラダの部屋に位置をしめ、セラダは満足してイスに腰かけ、サントリーのポケットビンに口をつけてウイスキーを呷りました。

その晩、セラダと日野が上乗の首尾を祝して例の飲めや歌えをやったことは申すまでもありません。けれどもセラダは祝宴の途中から親友をおいてき堀にして、小夜子サンを片隅にとらえて、たのむ、拝む、はては土下座してまでの懇願哀訴でした。それは多彩でもあれば執念深くもあり、またどことなく物の哀れもあるようなチャルメラ的なものであったのですが、当人の身にしてみればダテにチャルメラを吹いてるわけではなかったのです。必死なのでした。

セラダは大金を背にどッかとアグラをかいてみると、自殺だの心中なぞは当分延期の気分で、いまやシンから人生をたのしみたくなったというものです。

「心中、もう、イケマセン。ワタクシ、アナタのドレイなります。アタミへ一しょに行きましょう。