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はだかぎ
裸木
豊島 与志雄
「新潮」1926(大正15)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,049 字 · 33 页
」
佐野が外から帰ってくると、敏子はさも大事件のように彼へ報告した。
「ほう、武田君が。」
「ええ。随分長く、二時間くらい待っていらしたが、お帰りなさらないので……。」
「何か用かしら。」
「尋ねてみたんですけれど、別に用はないんですって。……こないだ、あなたはお逢いなすったんですってね。」
「あ、そうそう、話すのを忘れていたが……。」
佐野はぎくりとした。折が折だったので、後になって、二三日前に逢ったという風に、漠然と話すつもりだったが、まだそのままになっていた。
敏子は一寸不審そうな眼付をしていた。
「二時間も……何を話していったんだい。」
「何ということはなく……口を利くのが面倒だって風に、黙りこんで子供ばかり見ていらしたわ。奥さんがなくなって、やっぱり淋しいんでしょう。」
「そりゃあね……。」
「そうそう、あなたと同じようなことを云ってらしたわ。子供の匂いはどこか果物の匂いに似てるって……。」
「そうれごらん。」
「だけど、子供の寝顔を見てると海を思い出すって、そうあなたが仰言ったことを云うと、ふいと大きな声で笑い出しなすったわ。わたしびっくりしちゃった。」
「ふーむ、分らないんだよ。