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らしんのにょせん

裸身の女仙

野村 胡堂

「朝日」1932(昭和7)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,437 字 · 29 页

青空文庫

すると淋しさのうちにも、顫いつき度いような愛嬌があります。

「さア、御新造様、お通り下さいまし、旦那様は今日で十日、明けの六つから、暮れの六つまで、この暑いのにこんな場所で、根気よくお待ちになりました。他から拝見しておいたわしいようで、何辺かお諦めなさいますように申上げましたが、十日目にはきッと来る、と仰しゃって、一刻も此処をお動きになりません。あの通りお痩せになって」

「まア、宜い――、お鳥殿お通り下さい。拙者は萩江と申す浪人者、斯様な場所へ御案内申すのが、道に外れて居ることも、御迷惑なことも万々承知し乍ら、何んとしても、一言申上げ度いことがあって、諦め兼ねました」

「…………」

お鳥は思案に暮れて、部屋の入口に蹲まりました。入ったものか、逃げ帰ったものか、全く分別が付かなかったのです。

が、四角几帳面な浪人の言葉と、その端麗な顔を見ると、どんな警戒も、ほぐれるように解けて了って、側へ行って聞くだけの事を聞いてしまい度いと言った、わけも無い衝動に駆られるのでした。

「お鳥殿、何より先に、父上の伝言を申上げ度い――」

「私の?」

「左様、お鳥殿の父上は、藁のうちから捨てたことを、どんなに後悔して居ることか――、唯今、店先で見られた絵姿をたよりに、万に一つ拙者の手で探し当てたなら、直ぐ様知らせてくれるようにとくれぐれも