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せいこのしじん
西湖の屍人
海野 十三
「新青年」博文館、1932(昭和7)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,487 字 · 39 页
言葉を変えていうと、全身にすこしも知覚が無いとでも言おうか、いや、それとも少し違うようだ。
気がつくと、枕頭に人間が立っている。見ると一人ではない。三人だった。
その顔には、覚えがあった。中国服に身を固めた孫火庭と王妖順だった。もう一人はピカピカする水色の絹で拵えた婦人服のよく似合うマリ子だった。
「これは一体何事だい」
と漢青年は呶鳴った。
「貴方様は、遂に亡くなられました」
と孫が、いつになく穏かな口調で云った。
「莫迦を云うな。お前達がよく見えている」
「貴方様はお気付になりませんか」孫は顔を一尺ほどに近づけて云うのだった。「貴方様は京浜国道で、自動車を電柱に衝突なさいまして、御頓死遊ばしましたのですぞ。貴方様は幽界にお入りになって、唯今から幻影を御覧になっています。われわれも、貴方様の霊のうちにのこる一個の幻影にすぎません。お疑いならば、お手をお触れ下さい」
そう云って孫は、漢青年の手をとった。彼は自分の手がスウと持上って、孫火庭の身体を撫でているのを見た。しかし孫がそこにいることは、全く感ぜられなかった。青年は唇を噛んだ。
「御覧遊ばしませ。王もマリ子も、貴方様の幻想につれて、これから御意のままの御仕えを致すでございましょう。