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せいこのしじん
西湖の屍人
海野 十三
「新青年」博文館、1932(昭和7)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,487 字 · 39 页
これはいつも、そういう話の出たときに、私の言う話であるが、試みに諸君は身体の調子のよいときに、ポケットの懐中時計をソッと掌のうちに握って、
(はて、いま何時何分かなァ――)
と考えてみたまえ、すると目の前に、白い時計の文字盤が朦朧とあらわれ、短い針と長い針の傾きがアリアリと判るのだ。そうして置いて、掌を開き、本当の文字盤を見る。果然! 一分と違わず二つは一致している――これでも諸君は信じないというか?
四ツ角では、帆村ともう一人の黒い影とが、縺れあっているのだった。
私は、応援してやりたい気持一杯で、ペイブメントを蹴って駈けだしたのであるが、駈けるというよりは、泳ぐというに近かった。
「ぼぼぼ僕は、いいい生きているでしょうか」
と帆村の前に立つ怪しの男が、熱心に尋ねている。
帆村は、その男に胸倉をとられたまま、
「ウウ、ううウ」
と低く呻っているばかりだった。
「ちょいと、僕の身体を触ってみてください。この辺を触ってみて下さい」
泣かんばかりに彼の男は喚くのであった。そして帆村を離すと、ベリベリと音をさせて、われとわがワイシャツを裂きその間から屍のように青白い胸部を露出させた。