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しょっかくについて

触覚について

宮城 道雄

「水の変態」宝文館、1956(昭和31)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,533 字 · 5 页

青空文庫

私は盲人であるので、ものの形を目で見るかわりに、手の感覚で探って見るわけである。そして、手の先も始終ものを触って見る練習が積めば、だんだん指先の感じが鋭敏になっていくものである。

盲人の用いる点字というものは、人も知っている通りに、紙を針の先で突いて、その出た方の点のならべ方で読むのである。即ち、六つの点のならび方と、点と点との間隔で、いろいろの字になるのである。

その点字を、普通の練習しない人が撫でてみても、何が何だかわからないが、いつもやっていると、指先で撫でただけで読むことが出来るようになる。

指先をつかうことがだんだん慣れてくると、テーブルに手を触れただけでも、どこに疵があるか、また、汚点があるかもわかるようになる。そして織物のようなものでも色はわからないが、縞の荒さなどは、どんなぐあいかということはわかる。私は変わったものを、目で見るかわりに、撫でてみるのが楽しみなのである。

私はよく、春先になると、庭に下りていろいろの花とか、植木の葉とか、木の枝の曲りぐあいや根の張りぐあい、また下草の芽生えの柔かいのなどを、撫でてみることがある。それは私には、目明きの人が目で見るのと同じように、のどかで楽しい気持がするのである。