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しについてかたらず
詩について語らず
高村 光太郎
――編集子への手紙――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,322 字 · 3 页
明治以来の日本に於ける詩の通念というものを私は殆と踏みにじって来たといえます。従って、藤村――有明――白秋――朔太郎――現代詩人、という系列とは別個の道を私は歩いています。詩という言葉から味われるあの一種の特別な気圧層を私は無視しています。私は生活的断崖の絶端をゆきながら、内部に充ちてくる或る不可言の鬱積物を言語造型によって放電せざるを得ない衝動をうけるのです。このものは彫刻絵画の本質とは全く違った方向の本質を持っていて、現在の芸術中で一ばん近いものを探せば、恐らく音楽だろうと考えますが、不幸にして私は音楽の世界を寸毫も自分のものにしていないので、これはどうすることも出来ず、やむなく言語による発散放出に一切をかけている次第です。実は言語の持つ意味が邪魔になって、前に述べた鬱積物の真の真なるところが本当は出しにくいのです。バッハのコンチェルトなどをきいてひどくその無意味性をうらやましく思うのです。言語による以上、言語の持つ意味を回避するのは言語に対する遊戯に陥る道と考えるので、その意味をむしろ媒体として、その媒体によって放電作用を行うというわけです。