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はなしのたね

話の種

寺田 寅彦

「東京朝日新聞」1907(明治40)年9月~1908(明治41)年10月(不定期88回連載)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,082 字 · 64 页

青空文庫

但し演壇をあちこち歩き廻ったり、拳固を振りまわす労力はこの外であるのは勿論の事だ。

(明治四十年九月十五日『東京朝日新聞』)

五

土を食う人間

各種の土や灰を食う人間はあまり珍しくない。我邦でも昔から壁土や土器をかじる子供があるが、他人種でもやはり胃病やヒステリーあるいは悪阻のために土を食いたがる者が往々あるそうである。南アメリカの一部では土人のみか白人までも病的に土を嗜み、子供などは夜中に壁の泥や漆喰を剥がして食うから、それを制するため仮面を着せて寝かせるそうである。以上は病的な例であるが、また一方では一種の風味のために食用にする事がある。昔ローマ人は穀物に混じてプテオリという土地から出る白堊を食ったという。ボルネオ辺では菓子に粘土を使う。ボリビアでは馬鈴薯に粘土のソースをかけて食う。ペルシアでも塩気のある土を食う。それからセネガル地方では米に土を交ぜて食うが、これは単に腹を膨らせるためで味がよいためではないらしい。インドでは饑饉の時灰や土を木の皮に交ぜて間に合わせる事がある。また医薬として土を用いた例はアルメニアやスペインにもある。