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にんしきろんとしてのぶんげいがく

認識論としての文芸学

戸坂 潤

「唯物論研究 五十一号」1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,350 字 · 19 页

青空文庫

特権というのは勿論科学的認識という規準から割り出した特権なのだ。と云うのは、文芸は云うまでもなく主に言語表象による芸術であり、その意味では概念を乗具とする芸術であるが、処が科学的認識こそ、言語表象乃至概念を乗具とする認識であった。そこで文芸は、他の芸術様式に較べて、科学に特別近い近親関係を有っているわけなのだ。文芸が認識である所以は、美術や音楽が認識であるよりも、より以上に、認識が一等組織的に発達したために認識原型の意義を有っている科学的認識に、本質的に接近している、と云うのである。

文芸が言語表象による芸術であることはよいとして、夫が概念を乗具とするとは受け取れないと云うかも知れないが、併し言葉によって云い表わされるものは、さし当り何であれ概念なのだ。ただ問題はその概念が如何なる表象機能を以て登場するかにあるのであって、文芸に於ては概念は文学的表象として機能するが、併し決してただの概念的表象としては働かない、という迄である。

かくてともかく文芸は一種の認識である、而も科学的認識と本質的に近親関係にある認識である、ということが判る。それが一種の認識であり又芸術の中でも特権ある認識であるが故に、文芸と科学との連関は極めて密接で、この連関を除いては文芸の文学的本質は遂に捉えることが出来ない。