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にんしきろんとしてのぶんげいがく

認識論としての文芸学

戸坂 潤

「唯物論研究 五十一号」1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,350 字 · 19 页

青空文庫

だが、文芸全体を意味したり或いは特定の一つ二つの文芸ジャンルを意味したりするよりも、文芸創作(乃至之に直接して享受)のエスプリ・精神・を意味する方が、文学という言葉として高く買われていいだろうと思う。なぜというに、文学が暗に、小説とか詩とかいう特定ジャンルを指すかのように思うのは、勿論視野の狭い見地を告白するものであって、他の事柄についての見識までが疑われる底のものであるし、又文芸全体を依然として文学と呼ぶことは、折角文芸という科学的な言葉があるのに、非常に観念のハッキリしない言葉をわざわざ使うことになるからである。

なぜ文学という言葉がハッキリした観念を云い表わさぬか。日本語の固有な慣例はとに角として、少なくとも国際的な用語としては、文学は一般に文筆作品を意味しているのであって、科学上の文献や文書までも含むのだから、文学は必ずしも文芸に限定されないわけなのだ。それ故特に芸術的文学だけが、所謂文学というものに当るということになって、芸術領域の問題に関する限りは(精神の問題に関しては別として)、文学という言葉は無用な混雑を惹き起こすものに過ぎないからだ。