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にんしきろんとはなにか
認識論とは何か
戸坂 潤
「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页
之は一切の反唯物論的認識論者の頭痛の種であるらしい。併しそう心配することは要らないのである。
意識の物質からの発生の仮説についてはすでに述べた。それに準じて、意味と実在との一般関係も説いた。今はそういう一般問題としてではなく、もっと現実な問題として、社会に於ける物的事実が、如何にして一定の意味や価値や理想や自由や道徳を産むかを、説明すればよい。併し本当を云うと、こうした意味とか価値とか理想とか自由とか道徳とかいう観念そのものを、私は社会に於ける物質関係から取り出して見せるという手品はやる気がしない。私が説明する処を理解するためには、すでに予めそういう観念を必要とする。そういう観念がなぜ予めあるかということは、思想史の答える処でなければならず、そういう観念に相応する何物かが根源的にどこから発生したかということは、例の仮説による一般的な説明に譲る他はない。そしてここで再び予め記憶すべきは、如何なる観念論・理想主義・と雖も、こうした観念に対応する何かについて、その発生を説明しようとしたものは未だかつてないということだ。つまり之は観念論や理想主義では全く説明出来なかった或るものなのだ。