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にんしきろんとはなにか
認識論とは何か
戸坂 潤
「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页
社会の事物に於ける対立抗争する諸因子の間の関係、それによって社会の歴史が展開されて行くわけだが、この関係は、一定の量的な高下大小強弱の比重を示している。現実の物的事物の状況は観念論者が想定しているように、そんなに平坦な均一ではない。そこにはポテンシャル・エナージーの無限の差の世界が横たわっている。この量的関係は量的な認識を普通とするから量的なので、実は質的関係の量的な云い表わしにしか過ぎない。で今この量的関係が、意識という認識主観の独自の自我的関心によって、一定の自我的焦点を中心として、再編成され、モラル的に質化されれば、それがその人間にとっての価値関係となって現われる。
例えば社会に於ける階級対立は単なる物的関係にすぎないとも考えられる。だがその対立矛盾の関係は、この現象にとって根本的な要点をなしている。処が認識主観としての階級主観は、この対立の真只中に立っているわけだから、夫々の異った焦点に立脚してこの対立関係を反映する。こうして階級的な価値標尺が発生するのである。各個人相互間の評価尺度の関係も亦、そういう仕組みに他ならない。
位置のエナージーの差は、一定の落差を与える。