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いかにどくしょすべきか

読書と人生

三木 清

三木清『読書と人生』。同一底本的分册已合并为一书。收入:如何に読書すべきか、軽蔑された翻訳、書物の倫理、西田先生のことども、ハイデッゲル教授の想い出。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,486 字 · 57 页

青空文庫

私も入学してから外国に留学するまで五年間、先生の講義には休まないで出席した。先生はいつも和服であった。そして教壇をあちこち歩きながら、ぽつりぽつりと話された。時々立ち停って黒板に円を描いたり線を引いたりして説明される。その様子は、あの東京の哲学会で私が初めて先生の講演を聴いた時と同じであった。時には話がとだえて、教壇の上で黙って考え込まれる。そうかと思うと急に思索が軌道に乗ったかのように、せきこんで話される。いつもうつむいて話をされたが、急に目を上げて強度の近眼鏡の底から聴衆の方を見られることがある。それは話が一段落したか、講義が終ったしるしである。二時間の講義であったが「今日は疲れているからこれでよす」と云って、一時間ばかりでしまわれることもあった。その言葉にはまたそれで私たちの心を打つものがあった。きっと先生は前夜おそくまで勉強されていたのだな、と私たちはすぐ感じることができたからである。

先生の講義は教授風のものとはまるで違っていた。それは何か極ったものをひとに説明してきかせるというようなものでなく、ひとを一緒に哲学的探求に連れてゆくというようなものであった。