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どくしょとちょしょ

読書と著書

矢内原 忠雄

「図書」岩波書店、1940(昭和15)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,828 字 · 8 页

青空文庫

例えばアウグスチヌスの『神の国』は今より約千五百二十年前の著述であって、その執筆を始めたのは、北方蛮族の軍がロマを陥れて掠奪をほしいままにした事件の三年後(四一三年)であった。当時この災禍はロマ帝国が基督教を公認して、固有の多神教礼拝を禁じた事に対する神々の怒であると為す者があった。この世論に対して基督教の真理を弁証する為めに、アウグスチヌスは二十二巻より成るこの大著を著述したのである。

本書の最初の五巻はロマの歴史や多神教に関する記述が多く、退屈せずに読まれることは稀であると称せられる。併し自分で読んで見ると、決してそんな事はない。そこに論ぜられて居る問題は、要約すれば次の二点である。

(一)「戦争の常たる」殺戮・掠奪・捕虜・凌辱等の災禍が基督者の上にも加わったのは何故であるか。又之等の災禍に迫られたる基督者が自殺しなかったのは恥ずべきことであるか。

(二)ロマ帝国が広大なる領土を拡張し、又その長き持続を見たのは、果してロマ人の言う如く多神教の神々の力によるものであるか。

アウグスチヌスはこの二つの問題を極めて詳細に論じて、多神教の迷妄と基督教の真理を論証したのである。