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どくしょへんれき

読書遍歴

三木 清

「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页

青空文庫

後には次第に学校の友も出来たが、私の心はほとんどつねに孤独であった。田舎者の私は、特に父の血をうけて、交際ははなはだ不得手であった。学校の寄宿舎で暮して、町に知った家がなかった私には、家庭生活の雰囲気に触れることも不可能であった。結局私は、東京に住むようになってからも、いつまでも孤独な田舎者であったのである。

こうした孤独には多分に青春の感傷があったであろう。孤独な青年が好んでおもむくところは宗教である。むしろ宗教的気分というものである。宗教的気分はいまだ宗教ではない。それは宗教とは反対のものでさえある。宗教的気分がつねに多かれ少なかれ感傷的であるのに反して、宗教そのものはかえって感傷を克服して出てくるものである。自分で宗教的であると考えることそのことがすでにひとつの感傷に過ぎぬ場合がいかに多いであろう。高等学校時代を通じて私が比較的たくさん読んだのは宗教的な書物であった。それも何ということなく、いろいろのものを読んでいる。キリスト教の本も読めば、仏教の本も読む。日蓮宗の本も読めば、真宗の本も読む、また禅宗の本を読むこともあるという風であった。そうして一種の宗教的気分に浸るということが慰めであるように感じられた。