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どくしょへんれき
読書遍歴
三木 清
「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页
当時私は古典派ないし教養派であり、ギリシア悲劇などしきりに読んでいた。グロートの『ギリシア史』を繙き、ブルクハルトの『イタリア文芸復興期の文化』を読み、ダンテとかリオナルド・ダ・ヴィンチとかに心を惹かれていた。そういう点で私は林達夫と最もうまが合った。京都時代を通じて文学書のうち私の最も熱心に読んだのは詩であったであろう。その頃有島武郎氏らの影響でホイットマンが流行していたが『草の葉』は私にも忘れられない詩集である。ヴェルレーヌ、ボードレール、ヴェルアーランなど、ゲーテやハイネなど、みな好きであったが、私の特に愛したのはジャムであった。日本の詩人では、白樺派の影響もあったであろう。千家元麿が好きであった。先だって東北へ旅行した時、改造文庫の『千家元麿詩集』を車中に携え「車の音」などという詩を読んで、あの頃のことを懐しく想い起した。宗教書はいつも何か読んでいたが、当時最も深い感銘を受けたのは、フランチェスコの『小さき花』である、ヨルゲンセンのフランチェスコ伝を訳した久保正夫氏――天随氏の令弟――が東京から京都の大学院へ移って来て、私たちの仲間に加わったが、その久保氏もすでに亡き人である。