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どくしょへんれき

読書遍歴

三木 清

「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页

青空文庫

が出た時、私は早速求めたが、当時を思い出したためである。フロベールの書簡は、深田先生が、お訪ねすると、いつも面白いと話されるので、私も読んでみたが、なるほど面白かった。深田先生はまた、アナトール・フランスが好きであったようで、お訪ねするとやはりその話がよく出たものである。その頃私の見たのは『エピクロスの園』くらいであったが、後にパリの下宿で一時アナトール・フランスのものばかり読みふけったことがあるのは、深田先生の話がいつか私の頭に染みていたせいもあるであろう。その下宿は知らずしてアナトール・フランスの家の近くにあったが、ちょうど私のパリにいた時に彼は死んで、私は安倍能成氏と一緒にその葬式に行った。何かの因縁というものであろうか。そういうわけで、今は亡き深田先生のことを思い出す場合、アナトール・フランスを連想することが多いのである。

私の生涯にもやがて新しい変化が来た。学校を出てから二年間、大谷大学、ついでまた竜谷大学で哲学の講師をしていた私は、外国へ旅立ったのである。

十一

外国で暮した三年間は、私のこれまでの生涯において最も多く読書した時期であった。