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どくしょへんれき

読書遍歴

三木 清

「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页

青空文庫

タイプライターで打ってもらっておいたその報告を今は失ってしまったのは残念なことに思う。リッケルト教授のゼミナールにはいつもマックス・ウェーベル夫人が出席していられたが、その時のゼミナールの台本として用いられたのは、ちょうど新たに出版されたウェーベルの『科学論論集』であった。

ハイデルベルクにいた一年あまりの間に私が最もよく勉強したのはマックス・ウェーベルとエーミル・ラスクとであった。ラスクの弟子でその著作集の編纂者であり、後には日本へ来て東北大学で教鞭を取り、『日本の弓術』という本を土産にして今はドイツに帰っているオイゲン・ヘリィゲル氏から私はラスクの哲学を学んだ。私がハイデルベルクにいた時、氏は初めて講師となって教壇に立ったが、前の大戦――この戦争においてラスクは斃れたのである――に従軍したという氏の顔には深い陰影があった。私はヘリィゲル氏のゼミナールでボルツァーノについて報告した。この報告はやがて筆を加えて『思想』に発表した。その時分ボルツァーノの本は絶版になっていて手に入らなかったので、私はリッケルト教授の宅に保管されていたラスクの文庫からその本を借り出して勉強したことを覚えている。