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なぞのくびかざりじけん

謎の頸飾事件

山本 周五郎

「少年少女譚海」1931(昭和6)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,265 字 · 15 页

青空文庫

洗面器のカラクリ

とばかり、取っては投げ、掴んでは投げ、まるで阿修羅のように家の中を縦横無尽に暴れまわった。

かくして、泰昌軒の地下室に隠れていた怪支那人の一団は、間もなく樫田刑事一行のために捕縛された。

「へん、どんなもんだい」

壮太は流れおちる汗を横なぐりに拭きながら、数珠つなぎにされた悪漢の前で喚いた。

「おいらの親分は龍介様だ、そしておいらは拳骨の壮太様よ※(感嘆符二つ、1-8-75)」

洗面器のカラクリ

樫田刑事と春田君とは、ふたたび牧野子爵邸の化粧室に戻ってきた。

「さて、まず頸飾を出しましょう」

龍介君はそういって、書生を呼んだ。

「君、すまないがね、料理部屋へいって、水の流れでる溝口へ網を張っていてくれたまえ」

書生はかしこまって出ていった。

「さて小間使君、どうか額の傷を冷やしてくれたまえ」

龍介は小間使にいった。小間使はその瞬間何故かさっと顔色をかえた。そして慄えながら云った。

「いえ、私、もうよろしゅうございますの。もう痛みはいたしませんから」

「では、僕が手を洗わしていただこうかな」

龍介君はつかつかと洗面台へ近よって、勢よく水を出しながら、ていねいに手を洗いはじめた。