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たにまのしじゅうから
谷間のしじゅうから
小川 未明
「赤い鳥 鈴木三重吉追悼号」1936(昭和11)年10月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,044 字 · 7 页
しじゅうからは、なぜとちのきが、こんなつまらない問いを出したのかと疑わずにはいられなかったのです。
「いえ、昨日も旅の珍しい鳥が、ここへやってきましたが、私へは止まらなかったので、私は、悲しくてなりませんでした。」と、とちのきは、さも無念そうに、大きな葉をはたはたとふるわせていました。
「とちのきさん、あなたは、こんなに太いし、そして、高いではありませんか。きっと旅の鳥は、あの低い木を憐れと思って止まったのですよ。」と、しじゅうからは、とちのきをなぐさめたのでありました。彼はかかる険しい谷間の片すみにも、こうした悩みと争いがあるのかと痛ましく感じました。
そのつぎに、しじゅうからは、しらかばの枝へ移ったのです。
若い、すらりとしたしらかばは、ちょうど更衣をしているところでありました。
「そんなに私を見てはいけません。どうしてって、恥ずかしいのですもの。私のお化粧が、すっかりできあがった時分に、もう一度ここへきて、私を見てくださいまし。」といいました。
「しらかばさん、その時分、私たちは、どこにいるか知れませんが、たとえ、やってこなくてもおこってはいけません。