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おつきさまのうた

豊島与志雄童話集

豊島 与志雄

豊島与志雄『豊島与志雄童話集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:お月様の唄、お山の爺さん、影法師、キンショキショキ、金の目銀の目、銀の笛と金の毛皮、コーカサスの禿鷹、正覚坊、狸のお祭り、手品師、天下一の馬、天狗の鼻、泥坊、天狗笑、長彦と丸彦、ひでり狐、不思議な帽子、彗星の話、街の少年、山の別荘の少年、夢の卵、雷神の珠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,569 字 · 336 页

青空文庫

あまり飲むと身体にさわるよと人に言われても、彼は平気でした。酔うから身体にさわるので、俺のように酔ったためしのない者はいくら飲んでも大丈夫だ、と彼はいつも言っていました。始終貧乏をしながら、少しお金があると酒ばかり飲んでいました。村の人達は彼のことを、正覚坊だとあだなしていました。

ひどい暴風雨の晩でした。平助はいつものように徳利を前にすえて、ひとりつまらなそうに酒を飲んでいました。すると、表の戸をことりことり叩くものがあります。初めは風の音かと思っていましたが、それが何度も続くものですから、平助も少し気になりました。彼は杯を前に置いて、表の方をふり返りながらたずねました。

「誰だい?」

何の返事もありませんでした。耳をすますと、風と雨との音に交じって、やはりことりことりと戸を叩いています。

「何か用事かね」と平助はまたたずねました。

それでも返事がありませんでした。しまいに平助は、仕方なしに立ち上がって、表の戸を開いてみました。さっと風と雨とが吹き込んで来たかと思うまに、闇の中から、まっ黒な大きなものが、のそりのそりとはい込んできました。平助は腰をぬかさんばかりに驚きました。