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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页
ただ貴女が貴女の心に罪がこれだけあると思うほど、可い加減に罪を受けて、それだけ苦しめば可いのです。もしまた青天白日の御心なれば、平気でいらっしゃればそれで可い。誓って冤罪はお被せ申しません。どれ、そんなら、雲を掴んで、裁判しようか。」
綾子夫人は半ば死して、半ば器械的に傾聴するのみ。
「それ手を貸しな。」と号令一発。
かねてより命じけむ、夜叉羅刹は猶予わず、両個一斉に膝を立てて、深川夫人の真白き手首に、黒く鋭き爪を加えて左右より禁扼、三重襲ねたる御襟を二個して押開き、他目に触らば消えぬべき、雪なす胸の乳の下まで、あらけなく掻あくれば、綾子は顔を赧めつつ、悪汗津々腋下に湧きて、あれよあれよと悶えたまう。両の乳房を右顧左眄て、お丹はなぶり且つ嘲り、「ふむ、大分大きくなった乳嘴にぼっと色が着いて、肩で呼吸して、……見た処が四月の末頃、もう確かだ。それで可しと、掻合せてやんなよ、お寒いのに。」
両個はただちに手を引きぬ。
綾子は呼吸ある人形なりき。
「綾子様、このごろの習慣で、寡婦の妊娠のは大変な不名誉です。それに貴女のその腹は誰の種だか、御自分で解りますまい。