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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

「お前何をする失礼な。」と極附けたまうを鼻ではじき、「ふむ、どうもしやあしねえ、下さるものを頂きますのさ。慈善会とやら何とやらといって、御慈悲の会じゃげな。御辞儀無しに貰おうという腹さ、空腹い腹だね。はははは。」と高笑、「そこでお撮で召食る、む、これは旨え。」と舌鼓、「餓鬼泣えめえよ。」と小児にも与えて散々に喰散らす、怪しからぬことなり。

令嬢方は背後を向き、何かひそひそ囁きしが、店を棄置き、姿を隠せり。

屑屋はまた貴婦人を捕えて罵詈讒謗、「あ、あ良い匂だ咽返るようだ。」と鼻を突出してうそうそと嗅ぎ、「へん、咽も返るが呆れも返らあ、阿蘭陀の金魚じゃねえが、香水の中で泳いでやあがる。や、また塗った塗った、その顔は何だい、まるで白粉で鋳出したようだ。厚きこと土蔵の壁に似たりよ、何の真似だろう、火に熱けぬというお呪詛かも知れねえ。」

と正面よりお顔を凝視めて、我良苦多の棚下。貴婦人は恥じ且つ憤りて、頭を低れて無念がれば、鼻の先へ指を出して、不作法千万。

「なあ、おかみ様、その面の皮一枚引めくる方が、慈善会よりよっぽど良い慈善になるぜ。こちとらの大家様が高い家賃を取上げて適に一杯飲ます、こりゃ何も仁じゃねえ、いわば口塞の賄賂さ、怨を聞くまいための猿轡だ。