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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

」

と垣に寄添い、うっかりとする背後に靴音、はっと見返る眼の前へ、紅燈一閃、衝と立つは、護衛のために見巡る巡査。

婦人はちょいと小腰を屈め、「旦那、四谷へはどう参ります。」

じゃむこうに御託の昼間の書信慥に落手いたし候、好材料に候えども、お前様身に取りては極めて危険なものを見られ候。いかなる難儀あらむも計り難く候あいだ、屹度御用心なさるべく候。(彼の件)を見届け候以上は此の家に最早用は無之且つ居ては御身危く候まま、明日にも暇をお取りなさるべく候――

細字をもって認めたる警戒は、此方より「小田原評定云々。」と記しやりたる書信を引換に、「じゃむこう」の首輪を経て小間使秀の手中に落ちたり。廊下人無き処にて秀は読過一遍、「ああ、そうだ。おお、恐怖いことね。早速お暇を頂こう。ちょうど可い久濶で祖母様の顔も見られる。」

紙片は寸断し去って袂に葬り、勝手許に退らんと歩み来る、片隅の闇中より、黒きもの、ぬっと出づ。お秀「きゃっ!」と飛退れば、とんきょう声で「ばあっ。」と驚かす。善からぬ洒落なり。

小間使は腹を立て、「誰だい、ひと、愉快くもない、お巫山戯でないよ。」