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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页
と叱言を謂う。
「そんなに怒りたまうな。僕だ、僕だ。」と傍に寄るは百田なり。「おや、貴下ですね。」とお秀は俯向き、思えらく、「そんなら怒るのではなかったっけ。」什麼生この心中は、――少しあのナンと知るべし。時次郎は馴れ馴れしく、「堪忍おしよ。驚いたろう可哀そうに。」「は、い。」とただ逆気る。
「あのね、お前にね。」と突然お秀の袂を捕えて、ちょいと小あたりにあたって見れば、小間使はもう真赤、こいつものになると、時次郎は声を密め、「内証で相談がある。まあ、ちょいとちょいと。」曳かるる袖を払わんとはせで、「御串戯を。」と口の内、夢路を辿りて小蔭の暗闇。時次郎はひたと寄添い、
「すこしお依頼がある。肯いてくれないか。」お秀は虫の音「どういたしまして。」
「肯くかい。」「いいえ。」「ン、じゃ嫌か。」「どうですか。」と四辺を見る。「悪く初心ぶるな、もう知ってる癖に。」「あら、存じませんよ。」と手をもじもじ。
生殺与奪の権は我が掌中にあり、時次郎時分は可しと、「何むずかしいことは無いのさ。こうすればそれで可い。」とやにわに帯に手を懸くれば、わなわな震えて、「あれ。」と竦む。