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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

召したる薄色の羽織の片袖血※を浴びて紅の雫滴る。

「モシ照子様。」と突く真似をして「お殺んなすったね。」と時次はいう。

照子は心気昂進して、あえてものをも言わざりし。この時ようやく、太き呼吸、「ああ、幽霊。」と投出すようなり。

「幽霊。……」と時次郎は呟き、「なるほど幽霊と見える、怪しからん風体です。夫人、燈火をずっと、はい、宜しい。おや、御邸の。」

綾子も覗きて、「秀だよ。」と只呆。

「どうしてこんな。」とさも訝しげに時次が謂えば、「まあ、あられもない扮装をしてどうしたというのだろう。好く御覧、秀に限ってそういう取乱した風をする婦人じゃないよ。」「何ぞが妖けたのではございませんか。」と誰方か罪の無いことをおっしゃる。

「いえ、妖けたのに相違はありませんが、これはやはり、秀自身が妖けたのです。照子様、もしやおどかしはしませんでしたか。」

「ああ、ひょいと飛出して吃驚させたよ、私夢中で……」と震えていらせらる。

「なる、それで解りました。夫人、小間使が好奇心で、照子様をおどしたので、謂わば自業自得というものです。」「そうね、もういけなかろうか、可哀そうに。しかし失礼な、私の大切な御客様をおどそうなんて、飛んでもない。