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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

ナニ、お望ならば差上げましょう。その代りただでは不可ません、邪慳な姑をさらりと罷めて、慈愛な母親になってやる、と私の前で御誓い下さい。」

渠は依然として黙を修せり。

お丹は詰寄りて、「さもなければ質として、御手の御数珠を私が預りましょう、どっちか一つ御返事なさい。貴女、まあどうでございます。」と咄々人に迫り来る。

ここに到りて老婦人はもはや黙することを得ず、凜たるさりながらやや震を帯びたる声にてはじめて一言、「華族じゃぞ。」

老婦人はこれより前、惨絶残尽なる一場の光景を見たりし刹那、心挫け、気阻みて、おのがかつて光子を虐待せしことの非なるを知りぬ。なお且つ慙愧後悔して孝順なる新婦を愛恋の念起りしなり。されど剛愎我慢なるその性として今かく虜の辱を受け、賤婦の虐迫に屈従して城下の盟いを潔しとせず、断然華族の位置を守りてお丹の要求を却けたるなり。

「御承知下さいませんか、どちらもいけませんか。」

老婦人は屹として「華族じゃぞ。」

「何でございます。」

老婦人は始終一徹、

「華族じゃぞ。」平民にものはいわずとまた黙せり。

お丹少しく怒を帯びて、戸外に向い、「こう一件を連れて入んな。