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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

」

「どうれ。」と出て来た取次はこの体を見て呆果て、ただもう「えッ。」と謂いたるのみ、蛙のごとく眼をぱちくり。「何でも可い。」「隠居殿が御承知だ。」「鮫ヶ橋から奥様の死骸を届けに来たのだ。」「ぐずぐずせずに取次げやい。」と口々に呼ばわれば、「何だ何だ騒々しい。」と書生二人飛んで出しが、あまりのことに辟易して、茫然と見物せり。

「ええ華族様は気の長いもんだ。」「素直に待ってちゃあ埒が明かねえ。」「蹈込め。」と土足のまま無体に推込む、座敷の入口、家令と家扶は襷を綾取り、袴の股立掻取りて、大手を広げて立塞り、「汝、昼盗賊狼藉者。」「さあ一足でも入るが最後、手は見せぬぞ。」

と叱附くるを耳にも懸けず、口を揃え、

「やいやい隠居はどこへ隠れた、昨夜の死骸を持って来たぞ。受取れ受取れ。」と呼ぶ声、隅から隅まで鳴渡る。

家令家扶堪えかね、目配して、「山本、熊田、其奴等撲け。」と昔取りたる杵柄にて柔術も少々心得たれば、や、と附入りて、えい、といいさま、一人を担いで見事に投げる。

これに気を得て勇をなし、二人の書生は腕を叩き拳を揮うて躍懸れば、撲たれぬ前に、「あ痛、」「お痛。