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あかいひめとくろいおうじ

赤い姫と黒い皇子

小川 未明

「童話」1922(大正11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,237 字 · 9 页

青空文庫

そして、赤い着物をきたお姫さまは、その船におすわりになりました。

青い海を、静かに、船は港から離れて、沖の方へとこぎ出たのです。空は澄んでいました。そして、遠く、かなたには、島の影がほんのりと浮かんでいたのであります。

船には、たくさんの金銀が積み込んでありましたから、その重みでか、船は沖へ出てしまって、もう、陸の方がかすんで見られなくなった時分から、だんだんと沈みかけたのでした。どんなに、三人の侍女とお姫さまは驚かれたでありましょう。

「やはり、皇子が、わたしをやらないように引っ張っているのです。」

と、お姫さまは歎かれました。

「いいえ、お姫さま。これは、あまり金や銀をたくさん船に積み込んであるからであります。金や銀の重みを去れば、船は、軽くなって浮き上がるでありましょう。」と、侍女らはいいました。

「そんなら、みんな金や、銀を海の中に投り込んでおしまいなさい。」

と、お姫さまは、侍女たちに命ぜられました。

侍女たちは、金や、銀を手に取って、一つずつ海の中に投げ込みました。陸の方では、これを知っているわずかの人だけが、お姫さまの船を見送っていたのですが、このとき、海の上が光って、水の中に沈んでいくまばゆい光を、その人々はながめました。