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あかいひめとくろいおうじ

赤い姫と黒い皇子

小川 未明

「童話」1922(大正11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,237 字 · 9 页

青空文庫

そして、お姫さまの赤い着物に、日が映って、海の上を染めるよう見えたのです。

しかし、不思議なことには、船はだんだんと水の中に深く沈んでいきました。侍女たちが手に手を取って投げる金銀の輝きと、お姫さまの赤い着物とが、さながら雲の舞うような、夕日に映る光景は、やはり陸の人々の目に見られたのです。

「お姫さまの船が、海の中に沈んでしまったのだろうか。」と、陸では、みんなが騒ぎはじめました。

赤い姫君と黒い皇子の結婚の日のことであります。皇子は、待てども待てども、姫君が見えないので、腹をたてて、ひとつには心配をして、幾人かの勇士を従えて、自らシルクハットをかぶり、燕尾服を着て、黒塗りの馬車に乗り、姫から贈られた黒馬にそれを引かせて、お姫さまの御殿のある城下を指して駆けてきたのです。

城下の人々は、今度のことから、なにか起こらなければいいがと心配していました。ちょうどそのとき、皇子がやってこられるといううわさを聞きましたので、みんなは家の中に入って、かかり合いにならぬように、戸を堅く閉めてしまいました。

はたして夜になると、家の前をカッポ、カッポと鳴らして通るひづめの音をみんなは聞きました。