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あかいかしゃ

赤い貨車

宮本 百合子

「改造」1928(昭和3)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,168 字 · 71 页

青空文庫

ナースチャは、顔や胸があつくなってなんと返事してよいかわからなかった。なんとなく心ひかれたからアンナ・リヴォーヴナについて来は来たのだが……

「もし来たいなら、わたしが帰る時、一しょに行ってもいいね」

アンナ・リヴォーヴナはつづけて云った。

「わたしの家でも働いてくれる人がいるんだからどうせ」

「わたしにはお金がありません」

「そのくらいのことはわたしが立てかえといて上げてもいい。――お前さん、床の拭きよう知っているだろう?」

「知っています」

「洗濯出来るだろう?」

「ええ」

「スープのとりようだって知ってるわね、もちろん」

ナースチャは、ほんの少し弱く、

「ええ」

と答えた。(伯母のところでは、一月に二度くらいしか肉入のスープなど食べなかった。)

「それごらん!」

夕立の水たまり、そこにいまは日光と青葉のかげが爽やかにチラチラしている上を越しながら、アンナ・リヴォーヴナは陽気にナースチャに断言した。

「もうちゃんと立派な女中さんじゃないの!」

主人は技師で、大きい娘はもうお嫁に行ってしまっていて、家は暇なこと、月給は十三ルーブリということをアンナ・リヴォーヴナは説明した。