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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
04 三度目の正直
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,351 字 · 43 页
八
猪之はちょっと考えてから頷いた、「ああそうか、そんなところがおかしいんだな」
「おかしいとは、自分のことをいうのか」
「わけはあるんですよ」と猪之は云った、「こんなことは人に話すもんじゃねえだろうが、お医者の先生に話すんならいいでしょう」
「もちろんだ」と登は云った。
八
「あっしが十八の年のことでした」と猪之は云った、「頭梁のうちに娘が二人いるので、近所の女の子がよく遊びに来るんです」
登は藤吉の話を思いだしたが、むろんそんなけぶりはみせず、できるだけ無関心をよそおって聞いていた。
「その中に玉川屋という紺屋の娘で、九つになるおたまという子がいたんです、からだも顔もまるくぽっちゃりとしていて、気性もおとなしいすなおな子でしたが、――いやだな」と云って猪之は赤くなった、「ここからが云いにくいんだ」
「私は医者だよ」
「悪く思わないで下さい」と猪之はうしろ頸を手で撫でながら云った、「そのおたまがひどくあっしになついちゃって、まあそんなことはどうでもいいが、あっしのほうでも可愛い子だと思ってました、それでまあいろいろあるんだが、或るとき抱きついてきたんで、ひょいと唇を吸ってやったんです、いえ、勘ちげえをしねえで下さい、決していやらしい気持でやったんじゃあねえ、いつも可愛いと思っていたし、抱きつかれたとたんなんの気もなく、