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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
06 鶯ばか
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,626 字 · 45 页
五郎吉もおふみも眠っていたようだ。女房たちは眼顔で語りあい、おけいが長次の死躰を抱いて、差配の家へ運んでいった。死んだきょうだいの四人は、差配の家で湯灌をし、みんなで死装束をしてやってから、卯兵衛の隣りにある空店に移した。登はそれをあとで知ったのだが、長次が運ばれていったとき、彼は心の中でそっと云った。
――これできょうだいが揃ったな、さあ、いっしょに手をつないで、仲よくおいで。
上り端の煤けた障子が、うっすらと明るくなった。気温がさがって、坐っている膝頭や足の指先に、こごえそうな寒さを感じた。登は行燈の火を消し、火鉢に炭をついだ。
「先生、――」とおふみが云った、「あの子は苦しみましたか」
「いや」登は火鉢から手を引いた、「いや、苦しみはしなかった、らくに息をひきとったよ」
「苦しみませんでしたか」
「死ぬときはもう苦しくはないそうだ」と登は云った、「頭が死ぬ毒でやられるから、見ている者には苦しそうだが、当人はもうなんにも感じてはいないということだ、長次は苦しそうなけぶりもみせなかったよ」
おふみは良人のほうを見た。暫く見ていて、また仰向きになり、済まないが水をもらいたい、と遠慮した口ぶりで云った。