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あかごうしくろうえもん

赤格子九郎右衛門

国枝 史郎

「中学世界」1924(大正13)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,484 字 · 29 页

青空文庫

室は狭くはありましたけれど柬埔寨風に飾られてあって大変綺麗でござりました。

と、年長の覆面の水夫が、片手を上げて振りました。何かの合図なのでござりましょう、それと同時に他の水夫共は隣室へ立ち去って了いました。後には私と年長の水夫ばかりが室に残ったのでござります。

「いざ先ず夫れへお掛け下されい」年長の水夫は斯う云い乍ら一つの椅子を進めましたので、私は黙って腰掛けました。

すると、覆面のその水夫は、私の腰間の両刀へ、屹と両眼を注ぎましたが、

「失礼ながら其両刀、天晴業物でござりましょうな?」と、意外な事を訊いたものです。

「双方共彦四郎貞宗の作、日本刀での名刀でござる」

「如何でござろう、その名刀を、お揮い下さることはなりますまいかな?」――「是は又異なお頼み……なれども夫れだけの仔細ござらば、お頼みに応ぜぬものでもござらぬ。……抑、相手は何者でござるな?」――「国を奪い、人民を虐げる大悪人でござります」――「ウム、そのような悪人なりや、討ち果たすに異存はござらぬが……して其大虐無道の相手は、今、何処に居られまするな?」――「船底に閉じ込めてござります」――「何、此船の底にとな? これはこれは思いも依らぬ。