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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

しかし自分は到底それで満足できないのだ。この上は屍体解剖の結果を待つより外はあるまい」

尾形警部は大広間に帰って来ました。無駄とは思いながらも、八十名の参会者を片っ端から訊問して行ったのです。その結果は予期の通りで別にこれぞと思う発見もなく、それかと言って事件に関係のないことを保証することも躊躇されたのです。警部は我が身を、フィラデルフィア迷路の中に彷徨しながら精神錯乱した男に較べて、脳髄のしびれて来るのを感じたことでありました。

兄の屍体は法医学教室で解剖に附せられました。其の結果を受けとった尾形警部は、力もなにも抜けてしまって、机の上に顔を伏せました。報告書には次のような意味のことが書いてあったのです。

「自然死か毒死かの判別は不幸にして明瞭でない。毒死を立証する反応は明瞭に出て来ない。それかと言って自然死であるとも言うことが出来ない。たとえば微量の青酸中毒による死の如き、これである。今日の科学はこの程度の鑑別をするだけに進行していないことを遺憾とする」

最後の望みの綱も切れてしまったので、警部の無念を包んだまま、兄の急死事件も抛棄せられました。