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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

私の推測では、五十八分に入って来たのは丈太郎氏であり、時報をうけるために室内に電灯を点じ、無線送受信機が動作を始めたせいだと思っています。

午後八時六十分――つまり午後九時になって、三曲線は再び折れたような変化を示しています。ことに面白いと思う点は、今度の変化は、先に起った五十八分における変化とは大分趣きを異にしていることです。気圧の変化は、同じ様ですが湿度の激しい増大ぶりと、室内温度が前とは反対に下り始めていることは著しい特徴だと言わなければなりません。これは一体、何を物語っているのでありましょうか。……私の考えによると、丁度九時になって一人の人間が全身ずぶ濡れになって此の室に飛びこんで来たのです。そのために濡れた水分が室内に蒸発をはじめて急に湿度が高くなりました。蒸発作用の潜熱によって室内の熱量は奪われ、さてこそ室内温度の下降を導くに至ったのです。それから三分ほど経って、湿度と温度の曲線は、常識では考えられぬほどの異常な変動を生じています。すなわち、湿度は九十五パーセント近くに昇り、温度は華氏で十五度も急降しているではありませんか。これは濡れた衣服を着た人間が、この計器にふれんばかりの近くにすすみよったことを示すものなのです。