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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

倉庫の角のところまで来ると青年は、

「御苦労だった。これは少いがお礼にとって置け」

「どうも親分すみませんな」

「あの若僧の死骸は浮き上るようなことアあるまいな」

「永年の荒療治稼業、そんなドジを踏むようなわっしじゃございやせん」

青年はいまし方出て来た汽船の方へかえって行った。――と考えてはどんなものでしょうか。やあ、貴方は大変お顔の色がわるい、お風邪をめしたのじゃありませんか。此所に幸い熱さましのカプセルと、ホット・レモンもありますよ、こいつをグイッと、どうです。いい気持になりますよ。

私はもう元気に床を離れている。あれからこっち「赤耀館事件の真相」について再び考えをめぐらすことがいやになった。しかし兎もすれば、私はあの話の方へいつの間にか引き戻され勝ちである。

きけばこの頃、赤耀館の主人公は、精神異常だと言いふらされているそうだ。私は彼の物語った事件の真相なるものが、全然虚構であるとは思っていないが、勿論あの全部を信用しているものではない。私の睨んだところでは、あの赤耀館の主人公は松木亮二郎その人であって、決して笛吹川画伯の化けたのではないと思っている。