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ちょうかきんむ
超過勤務
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,619 字 · 31 页
髪毛がしらがになり始めるときそうなるのと反対に、いましもそこから黒くなりかけているようにみえる。あまり日光にあたらない者に特有の、白ちゃけた、しぼんだような顔は皺だらけで、干からびたような細い唇にも血のけは薄かった。
彼は思いだしたように、さっきと同じベル・ボタンを押し、ボイス・パイプの蓋をあけた。
「どうしたんだ給仕くん、お茶をくれたまえ、お茶を」彼はそう云って返辞を待ったが、返辞がないのでまたベル・ボタンを押し、パイプの中へどなり声を吹き込んだ、「――おい給仕くん、柴田くん、おい、きみ」
彼はボイス・パイプの蓋を閉め、ポケットからハンカチを出して額の汗を拭き、大きな溜息をついた。
「土曜日だった」そう呟いて彼は腕時計を見る、「もう四時か、土曜日の午後四時二分前、みんな帰っちまった、残っているのは宿直と夜警と掃除婦くらいのもんだろう」
低くモーターのうなりが聞こえて、頭上の架線が動きだし、彼の右側のほうから金網の籠が進んで来た。それは壁の四角い穴から出て来たものだが、彼の頭上のところで停止すると、彼が手を伸ばすより早く浚渫機が口をあける