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ちょうかきんむ

超過勤務

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,619 字 · 31 页

青空文庫

ように、籠が二つに割れて、浚渫機が泥を吐き出すように、中にはいっていた書類をデスクの上へ吐き出し、すぐに口を閉めて、もと来た方向へ戻っていった。それはあたかも、誰かが彼のひとり言を聞いていて、まだみんな帰っちまったわけじゃないぞと、彼に警告したかのように感じられた。

「やれやれ、発送の中島はまだいるんだな」彼は吐き出された書類を取り分けながら、げっそりしたように呟いた、「――こんなものは月曜でいいじゃないか、あいつは成績をあげるのに夢中なんだ、そのために他人が迷惑しようとなんだろうとかまわない、ただもう自分の点数をかせぐことでいっぱいだ、ふん、その結果がどうなるか見ているがいい、部長クラスから役員まで、社長と一族でぎっちり固められているんだ、どんなに成績をあげたところでいまの椅子から蹴おとされずにすめば万歳だということを知ってびっくりするな」

分類を終わった彼は、まだハンカチを手に持っているのに気づき、それをたたみ直してズボンのポケットにしまった。また記帳にかかったが、まもなくデスクの上の電話の一つが鳴りだし、彼は左手で受話器を取った。