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ちょうかきんむ
超過勤務
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,619 字 · 31 页
「はあ」と彼は喉で声をころしながら、電話機に向かって反射的に微笑した、「こちらはにほん屋百貨店の輸入品整理部でございます、私は整理部副部長代理の木内徳三でございますが、はあ」
電話の相手はなにか云い、彼はさえぎろうとし、相手はかまわず云い続け、彼はペンを持った右手を振り、それからおもむろに声を高めた、「――失礼ですが、こちらはにほん屋百貨店の輸入品整理部でございます、バー・ボンポンクラブではございませんし、したがってまりっぺという女給さんもおりません」彼は辛抱して相手に誤りを告げる、「はあ、いいえ嘘などは申しません、こちらはにほん屋百貨店の輸入――」
電話は先方から切れた。彼は受話器をみつめて、首を振りながらそれを戻し、伝票と帳簿に向き直った。
「ハンド・バッグ六ダズン、六ダズン、七、どうしてこうハンド・バッグが売れるんだろう」と彼は呟く、「それもみんな高価なやつばかりだ、おれのサラリーより高いのがぱっぱと売れるんだが、いったいどんなやつが買うのか、そういう客のふところがどんな仕掛けになっているのかみてやりたいもんだ、ええと次は手袋か、手袋が十三ダズンと二、十三ダズンと、二」