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えちごのふゆ
越後の冬
小川 未明
「新小説」1910(明治43)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,272 字 · 15 页
太吉は髪の縮れた、眼の大きな児であった。燃え上った火に薪を入れて、火のこれに燃え付くのを見守っている。紅い炎の舌は、この黒い鉄瓶を嘗めるように周囲にちらちらと纏わって、つるつると細い鉄棒を辿って、天井の梁にまで走ろうとしたけれど忽ち思い止まったように穏やかに燃え収った。
太吉は全く火の燃え付いたのを見て、又傍の竹を取り上げて小刀で孔を明け初めた。白い細な粉がばらばらと破れた膝の上に落ちる。暫らく太吉は熱心に気を笛の方に取られていたが、ふと手をやめて窓から外の空合を眺めた。ただ白く雲自身が凍っているように、眤として空は鈍く、物憂く、日の光りすらなかった。彼方の方は一面に暗くなって見える。暗くなっている空に浮き出ているように渓を隔てた松林の山は黒く見えて、僅かに見覚えがあるため、それが近くの山であるということが分るが、若し、全く見覚えがなかったなら、あの山は十里も彼方にあると言われたとて、それを信ぜずにはいられないような、遠い気持がする。太吉の眺めていた眼は自から塞がった。言い知れぬ悲しさが胸に湧いたからである。
「もうお母は帰らしゃる時分だ。どの辺へ来さっしゃったろう。