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えちごのふゆ
越後の冬
小川 未明
「新小説」1910(明治43)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,272 字 · 15 页
哀れな裸姿になって木は悄然と立っている。枝は四方に咲いていて、この細い枝にも、冷な、切るような、風が当るかと思うと痛々しい。その細い梢の頂を見詰めていると、急に太吉は母が恋しくなった。
鉄瓶の湯は煮え沸ぎって、火は何時しか消えてしまった。太吉は笛と小刀とを下に置いて家の外に出て見た。
一度降った雪は、まだ処々消えずに山や、田や、圃に残っていた。麓の村も見えた。村の端にある水車場の家根も見えた。その水車場の傍を通る往還も見えた。けれど一人の影すら見えなかった。隣村でこの頃新築した小学校が白く林の間から見える。町へ行く時通る長い野中の松並木が微かになって見える。
北の海の方を見ると、ただ白く波頭が躍っていた。空は暗く、悪魔が住むように思われた。林の頂に遮られ、山の鼻に隠れてその暗い空も、鉛色をした海も一部しか見えない。前には脈々たる頸城の山嶺が迫って、その高い山を越えれば他国である。何の山にも雪が来て頭が真白になっていた。雲が降りて山々の腰から上は墨を塗ったようだ。
太吉はまた暗い沖の方を見た。
「お母は何うさっしゃったろう。……いんまに降って来るだに……。