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えちごじし
越後獅子
羽志 主水
「新青年」博文館、1926(大正15)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,114 字 · 15 页
其処へ、検事局から、山井検事が、書記を連れて、出張して来た。
(五)
中肉中背、濃い眉毛と少し大き過ぎる締った口の外には特長のない、眼鏡も髯もなく、毬栗頭で、黒の背広に鼠色のネクタイという、誠に平凡な外貌の山井検事が、大兵肥満で、ガッシリした、実行力に富む署長と、相対した時には、佳いコントラストを為した。
此年若な、見立てのない青年検事を向うに立てた時、署長は思った。役目の手前だ、拠無い。斯様な青二歳に何が判るかマア此方で御膳立てをしてやるから、待ちなさい。斯様な場合にいくつもいくつもぶッ突かって修業をしてから、初めて物になるんだヨと。
腹の中で、こんなことを考えて居るのを、当の相手の検事は知ろう筈がない。署長と警部の調査報告を、平凡な顔で謹聴して、一句も洩さず頭に入れる。所々で、ハアハアと謙遜な相の手を挟んだ。
報告が、一と通り済むと、夫では現場へ廻りましょうと座を立った。
屍体を巨細に視た上、煤けた部分を払わせて、熟々と眺めて居た山井検事は、更に頸の部分、手拭の巻きつけてある工合や、頸に喰い込んでる有様等、詳細に観察した後、二三の質問を、警察医に発した。