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ろじょう

路上

芥川 竜之介

午炮响后,图书馆陷入诡异的寂静,大学生俊助埋头书海,时间随着指针流逝,但这份平静下似乎藏着什么在悄悄酝酿。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,539 字 · 87 页

青空文庫

が、その内にふと眼を挙げて、近くの吊皮にぶら下っている彼の姿を眺めると、たちまち片靨を頬に浮べて、坐ったまま、叮嚀に黙礼の頭を下げた。俊助は会釈を返すより先に、こみ合った乗客を押し分けて、辰子の前の吊皮へ手をかけながら、

「先夜は――」と、平凡に挨拶した。

「私こそ――」

それぎり二人は口を噤んだ。電車の窓から外を見ると、時々風がなぐれる度に、往来が一面に灰色になる。と思うとまた、銀座通りの町並が、その灰色の中から浮き上って、崩れるように後へ流れて行く。俊助はそう云う背景の前に、端然と坐っている辰子の姿を、しばらくの間見下していたが、やがてその沈黙がそろそろ苦痛になり出したので、今度はなる可く気軽な調子で、

「今日は?――御帰りですか。」と、出直して見た。

「ちょいと兄の所まで――国許の兄が出て参りましたから。」

「学校は? 御休みですか。」

「まだ始りませんの。来月の五日からですって。」

俊助は次第に二人の間の他人行儀が、氷のように溶けて来るのを感じた。と、広告屋の真紅の旗が、喇叭や太鼓の音を風に飛ばせながら、瞬く間電車の窓を塞いだ。辰子はわずかに肩を落して、そっと窓の外をふり返った。