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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
淋しいだろう?
とやさしい軽い笑をただよわせながら、一番大きい男の子に云った。
土間に下りて、私を後の方から見て居た子はいきなり大きな声で、
「ワーッ
と笑った。
私は少しいやな気持になった。けれ共、再び、
「ねえ、淋しいだろう。
と云った時、
「お前の世話にはなんねえからなっし。
と怒叱られた時ほどいやな気持にはならなかった。先ず、あんまりの返事に私は男の子の顔を見た。上り框の婆さんの傍に立って私を見下して恐ろしい顔をして怒叱ったのであった。
私より婆さんの方がなお驚いたらしかった。その児の方を振向くと一緒に手を引っ張りながら、
「何云うだ。そないな事云うものでねえぞ。
と云った。
私の心の中には、一種の「あわれみ」と恥かしい様な気持が湧き上ったのであった。
私は、ほんとうに只、親切の心から云った言葉をこんな荒々しい言葉で返され様とは夢にも思って居なかった。見なれない年若な女が自分達の家へいきなり入ってきて、
淋しいだろうの
何のと云うので年上の子は何か誤解したのであったろう。他人の親切を、親切として受入れる事の出来ない子達だと思うといかにも「みじめ」な気持にもなるけれ共、私の掛けた親切な言葉は、今まで、今の様な言葉で受けられた事がないので、いかにも気の小さい、気はずかしい様な気持にもなった。