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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

つまる処は根の強い菊太がいつもいつも甘い事になって仕舞うのが常である。

祖母は、自分の聞きともない願事に、なるたけ気を腐らせまいと絶えず手か体を動かして居る。「くるみ」を破り切ったので、今度は茶を出して美濃紙で張った「ほいろ」の様なものを、炉の上にのせた中にあけ火を喰わせ始めた。

折々手にすくいあげて少しずつこぼして工合を見る。ザラザラ……ザラザラ……と云う音にしばらくは菊太の低い声もかき乱されるけれ共、自信のある菊太はなお話しつづけ、その音が止んだ時には又、ききともないその願事が、はてしもない様に続いていや応なしに耳に入るのである。

煙草の火が消え、茶にさす湯が冷っこくなっても菊太はやめ様としない。

到々祖母は根まけが仕出す。

「お前のまけて呉れまけて呉れには、ほんとうにいやになる。いつになったらそんな事を云うのを止めるんだろう。毎年毎年御前がいやな事をきかせない年はないじゃないか。あんまり不作で御前の手に負えない様なら、もう田を作るのをやめてもらおう。

いやな顔をして祖母が斯う云い出すと菊太は少し力づいた調子で又繰返すのである。

祖母は若い時処々を歩いたのでいろいろな言葉を使う。